12/3ふじのくに美しく品格のある邑「伊豆の国市浮橋」 『浮橋そばの里祭り』に密着
こんにちは!しずおか農山村サポーター「むらサポ」です。
今年で23回目を迎えた「浮橋そばの里祭り」。10時販売開始、11時には1,800食が完売。
聞くに圧巻な響きですが、人口597人※1の地区で、手打ちそば1,800食を、朝8時から並び始めるお客さんに、23年もの間もてなし続けられる裏側が気になり、密着させて頂きました。そして、地域が一丸となる頼もしい団結力に圧倒されました。
この日、そば祭りに集まるボランティアは約200名。「動けないお年寄りと子どもたち以外総動員」と、浮橋まちづくり実行委員長の土屋實さんは話してくれました。朝は6時集合。公民館外では前日に設置した釜土で、7時には火を焚き始め、餅つきの準備をし、浮橋産野菜や加工品の販売(焼き芋・おやき・自然薯料理等)をする方々も忙しくなり、9時にもなると常連らしき方々が10時の販売開始を前に、「売って欲しい」と列をなします。もちろん、かけそば販売にも9時には行列。
その舞台裏とは別に、公民館内には早朝からそばを打ち、正麺し続ける婦人会の方々。皆さんは外の祭りの様子を見ることもなく、楽しみにしてくれる方々のために動き続けています。前日も薬味となるネギをひたすら切っていました。それぞれ皆に役割があり、地域一丸となってこの祭りは23年もの間継承されています。
「浮橋そばの里祭り」は、地域を知らない人にも特産品であるそばをふるまうことで、人口減少が進むこの地域を賑やかにしよう、故郷に戻ってきてくれる人を増やしたいという思いから始まりました。土屋さんによると、毎年開催日が近づくと「今年はいつやるのか?」と問合せがあるそうで、実際、当日の会場は毎年楽しみにして来るお客さんで溢れていました。
毎年この時期に合わせて伊豆旅行を企画しバイクのツーリングで来る人、この祭りを目標に三島・沼津から自転車仲間と来る人等々、この小さな里を目指して近隣・他県から多くの人が集ります。ご夫婦でかけ蕎麦3杯を持っている方にお話を聞くと、去年2杯目が食べたかったのに売り切れたからだそうで、「ここのそばは美味しい。そして毎年この時期は天気がいい。この雰囲気の中で食べるのが楽しくて通いつめている」と話してくれました。雲一つない青空の下、じんわり温まる打ちたてのそばを頂くのは本当に気持ちがいいものです。「12月の1週目はお天気がいいから、以前は2週目だったのを変更した」と区長の古屋洋司さんが話してくれたのを思い出しました。
ふじのくに美しく品格のある邑に認定されている伊豆の国市浮橋地区。北は韮山町、東は熱海市と隣接し、火山丘陵地の山麓に地殻変動で生じた盆地にある。県道から脇道にそれること数分、山間にぽっと、そこだけ少し昔の日本にタイムスリップしたような原風景が姿を現す。地区のほぼ皆が田畑を持ち、自分たちが食べる分を季節に応じて育てているため、どの時期に訪れても四季折々の里山の風景が見られる。
隠れ里のようにも見える浮橋。平家の落ち武者や武田信玄の落ち武者が辿りついて里を拓いた等諸説あるが、平家ボタルが神社の境内であわく飛び交う景色を見るとそれも納得です。「浮橋」という幻想的な名前自体、昔は地域全体が湿地地帯で、自生する絡んだ藤づるや、渡した木の上を歩いている姿が浮いているように見えたことから名付けられたのだそうです。※2・3
浮橋地区では、炭焼きと蕎麦栽培が代表的風物詩として定着しています。「蕎麦は非常食だった」と、区長の古屋さんは語ってくれました。「品種改良が進む前の稲は、天候に左右された。米は8月には収穫量が予測できた。それを見て、そばを8月末に多くまいた。11月には収穫ができて栽培時期が短い。どちらにせよ米は政府にもっていかれるから、そばを“おやき”や“すいとん”にして食べていた。今は蕎麦は高いものだが、昔は平民の食べ物だった」。当初、年越しそばを自宅で食べたいと120程の家庭から始まった栽培が拡大され、現在は文化として根付いています。その証拠に、そば祭りでは各自の名前が書かれた自家用製麺機が持ち込まれていました。
「浮橋そばの里祭り」で使用されるそば粉は100%浮橋産。「“国内産そば”と書いてあるものは多くあるが、ブレンドなしの純粋なものは少ないよ」と古屋さん。実際、そばの国内自給率は24パーセント。※4 北海道や長野のように機械化されていないこの地区では大量生産ができません。「『浮橋うどん』は米と小麦のコンバイン(収穫機械)が同じだから商品化できるが、豆とそばのは違うから手で刈っている」と教えてくれました。私たちがこの日、口にするそばは、浮橋の人たちが代々丁寧に栽培しているもの。それが味わえるのが一年に一度のこの日であり、故に、“まぼろしの”そばの里祭りとも呼ばれているのです。
会場には、「祭りのこと、浮橋のことを耳にしたことはあるけれど来たことがなかった」人も多くいました。来年は皆さんにもぜひ足を運んで頂きたいと思います。そば祭りだけでなく、まちづくり委員会の活動は多岐に渡り、子どもたちを招いてのカブトムシ狩り民泊から、広尾小学校の田植え・稲刈り体験、ホタル観賞とそうめん(浮橋産)イベント他様々。イベント以外でも、浮橋には、美しいそばの花、自然に生息するホタル、人馴染みがよく気取らず温かい人々がいます。人と人のつながりが薄い現代で、「有事の際は一番強い。誰の足が悪い、という所まで把握している」と区長さんが胸をはって言えるほどの団結力が浮橋の魅力であり、このそば祭りを可能にしているのです。
浮橋地区でのイベント他問合せは、
浮橋まちづくり実行委員会(代表: 伊豆の国市商工会)まで 0558-76-3060